🗞 今日のニュース:あと2日で「90日間停止」が始まります
2026年4月10日、トランプ政権が日本を含む多くの国への相互関税(国同士の貿易不均衡を是正するため、輸入品に追加でかける税)を「90日間停止」する措置が始まります。今日は4月8日、残り2日です。
トランプ米大統領、多数の国に対し相互関税を90日間停止と発表(JETRO ビジネス短信、2025年4月)によると、この措置は当初2025年4月に発表され、日本を含む56カ国・地域を対象に相互関税の上乗せ分を停止するものです。停止期間中は、10%の一律関税のみが適用されます。
そもそも「24%」という日本向け関税はどこから来たのか。なぜトランプは止めたのか。そして、日本の海外ビジネスはこの90日間でどう動くべきなのでしょうか。詳しく調べてみました。
🔍 「24%」という数字はどこから来たのか
日本に設定された相互関税率「24%」は、米国と日本の間の貿易不均衡から算出されています。
計算方式はシンプルです。米国に対して日本がどれだけ多く輸出しているか(対米貿易黒字)を、日本の対米輸出額で割った比率が基準になります。トランプ政権が相互関税上乗せ分を90日間停止へ:世界経済悪化のリスクはなお続く:3つのシナリオ別試算(野村総合研究所、2025年4月)の分析によると、この24%がそのまま適用された場合、日本のGDP(国内総生産)は最大1.26%押し下げられると推計されています。
日本のGDPは約560兆円規模ですので、1.26%の押し下げは約7兆円の経済損失に相当します。同試算では、標準シナリオ(交渉で5ポイント程度引き下げ)でもGDPは1.15%下がり、日本が景気後退(リセッション)に陥る確率は6〜7割とされています。
では停止中の10%と、停止後に発動される24%の差——この14ポイントをめぐって、日米交渉官はテーブルにつき続けています。そもそも、なぜトランプ大統領は発動したばかりの関税を止めたのでしょうか。
🌍 なぜトランプは止めたのか——交渉カードとしての関税
関税の停止は「譲歩」ではなく、「交渉の扉を開く動き」です。
停止を決断した最大の理由は、米国債(米国政府が発行する借用書)市場の急変です。相互関税の発表直後、世界の投資家が米国債を売り始め、長期金利が急騰しました。通常は「安全資産」として買われるはずの米国債が売られたことで、市場は米国経済そのものへの信頼が揺らいでいるとみなしました。
トランプ米大統領、多数の国に対し相互関税を90日間停止と発表(JETRO ビジネス短信、2025年4月)が示す通り、停止の対象は「報復措置を取らなかった国・地域」です。中国は報復に踏み切り、結果として125%という異例の高関税を課されました。日本は正面衝突を避け、交渉の席を確保しました。
つまりこの90日間は、米国が「話し合う意思があるなら条件を下げる」と示したウィンドウです。しかし止まっても消えない打撃がすでに進行中です。
🗾 止まっても消えない「自動車25%」の現実
相互関税が停止されても、自動車と鉄鋼・アルミニウムへの25%追加関税は停止対象外です。
日本の対米輸出の約4割を占める自動車・同部品にとって、この25%は「猶予なし」です。米トランプ関税の行方(1)変遷する関税措置と在米日系企業の対応方針(JETRO、2025年)によると、在米日系企業の多くは「価格転嫁」を短期的対応として選択していますが、米国内消費者への価格上乗せには限界があり、中長期的には生産拠点の見直しを余儀なくされる可能性が高いとされています。
完成車メーカーだけでなく、トランスミッション・電子制御ユニットなどを供給する中小部品メーカー数百社も、コスト増加を吸収できるかどうかの瀬戸際に立たされています。そして今、もう一つの問題が浮かび上がっています——台湾との競争です。
💼 台湾はすでに先を行っています
ここまでを整理します。
日本への相互関税は24%。停止中は10%の一律関税が適用され、自動車・鉄鋼への25%は継続。GDP押し下げ効果は最大1.26%(約7兆円規模)。停止の真意は「交渉への招待」であり、この90日間は条件を詰める最重要ウィンドウです。そして同じゲームを、台湾も同時進行で戦っています。
台湾 関税か投資か——半導体サプライチェーンをめぐる米台関税交渉(アジア経済研究所、2026年)によると、台湾は「ゼロ関税交渉・米国産品購入拡大・対米投資拡大・非関税障壁の撤廃・企業支援策整備」という5つの戦略を掲げ、交渉を有利に進めました。当初32%だった台湾の相互関税率は大幅に引き下げられています。
トランプ関税後の日本企業による対米投資動向(JETRO、2026年1月)によると、台湾企業の対米輸出は2024年に46.1%増加し、電子部品に限れば92.6%増という驚異的な伸びを記録しています。半導体という戦略物資を持つ台湾が、関税という圧力を「投資交渉のテコ」として巧みに活用した結果です。
まず直撃するのは:自動車・製造業の輸出企業
最初に打撃を受けるのは、対米輸出比率の高い完成車メーカーとその直接サプライヤーです。価格競争力が落ちれば米国内での販売台数が下落し、国内工場の稼働率低下→雇用調整へとつながる可能性があります。
次に広がるのは:物流・金融・商社
自動車向け海上輸送を担う海運会社は荷動きの減少を見込み始めており、貿易金融を提供する銀行・信用機関は審査基準の見直しに入っています。総合商社は、米国向けサプライチェーン(原材料から製品までの供給ネットワーク)の再設計という大規模プロジェクトに着手しつつあります。
👤 海外キャリアを考えている人が今夜考えること
自動車産業の拠点再編が進めば、米国での採用が増え、国内工場は縮小方向に動く可能性があります。一方、「現地化」を進める企業では、米国側でのマーケティング・法務・渉外スタッフへの需要が高まります。英語での交渉力や通関・関税制度の知識を持つ人材の市場価値は、この90日間でさらに上昇していくでしょう。
🧭 90日間でできる3つのこと
この停止期間を「何もしなくていい猶予」と見るか、「動ける最後のウィンドウ」と見るかで、90日後の立場は大きく変わります。
- ① 対米売上の関税影響を試算する:自社製品のHSコード(Harmonized System=国際的な商品分類番号)を確認し、24%が適用された場合の利益影響をシミュレーションします。JETROの無料相談窓口や通関業者との連携が第一歩です。
- ② 代替市場・代替調達先のリストを作る:米国依存度が高い製品ラインは、東南アジア・インド・中東市場への展開可能性を今から探ります。関税がかからない市場を優先したポートフォリオの組み換えを準備する好機です。
- ③ 政府系支援策を使い切る:JETROは相互関税対応の専門窓口を設け、輸出入の関税分類見直しから現地パートナー探しまで無料でサポートしています。90日間は補助金・助成金の公募が集中する時期でもあります。
📚️ 参考資料
- トランプ米大統領、多数の国に対し相互関税を90日間停止と発表(JETRO ビジネス短信、2025年4月)
- トランプ政権が相互関税上乗せ分を90日間停止へ:世界経済悪化のリスクはなお続く:3つのシナリオ別試算(野村総合研究所、2025年4月)
- トランプ関税後の日本企業による対米投資動向(JETRO、2026年1月)
- 米トランプ関税の行方(1)変遷する関税措置と在米日系企業の対応方針(JETRO、2025年)
- 台湾 関税か投資か——半導体サプライチェーンをめぐる米台関税交渉(アジア経済研究所、2026年)

コメントを残す